【最新研究】就活生はAI選考の何を嫌うのか?
AI面接が候補者に不信感を抱かせる問題について、最新の実験室実験で重要な知見が得られました。人々がアルゴリズムによる判断を避ける理由は、性別などのセンシティブ情報が判断材料に使われる懸念にあります。
「AI面接」の普及
企業の採用活動において、AIやアルゴリズムの導入が急速に広がっています。国内に関して、大手企業の新卒採用では約5割、飲食・小売のアルバイト採用では3割、中小企業の選考でも2割ほどがAI面接などを活用しているという推計もあります(出典:HRzine)。
しかし、効率化が進む一方で、面接の候補者からすると複雑な心境かも知れません。ある調査では、AI面接を経験した人の半数以上が、対人面接に比べて「自分の実力を発揮できた感覚」や「企業の誠実さ」を感じにくいと答えています(出典:日本の人事部)。さらに、AI面接では、辞退理由の第一位に「面接方法への納得感のなさ」が挙がっています(出典:同上)。効率を求めて導入した仕組みが、優秀な人材を遠ざける要因になってしまうとすれば残念です。
それでは、AIによる効率化を進めつつ、候補者を遠ざけないことは可能なのでしょうか。まずは、候補者たちがAI面接を本当に嫌うのか、また嫌うとすればなぜなのかを知る必要があるでしょう。今回は、まさにそうした問いを実験によって調べた研究を紹介します。
候補者はAI選考を避けるのか?
Dargniesらの研究では、採用の決定権を人間が持つか、それとも職務成績などから自動的に採否を決定するアルゴリズムが持つかによって、候補者の反応がどう変わるかを実験しました(Dargnies et al., 2024)。研究チームはオンラインで2,000名を超える参加者を集め、労働者役としていくつかの課題を解かせました。
参加者が取り組んだのは、図形を用いた認知課題や、数字の行列から特定の数を数える実務的なタスクです。これらの成績を組み合わせたものが「職務成績」として扱われます。そして、職務成績に基づいて、自分と別の参加者のどちらが採用されるかが決まります。そこで、この採用の判断を(1)人間のマネジャーに任せるか(2)アルゴリズムに任せるかを、参加者自身が選択しました。
実験の結果、まず、アルゴリズムによる採用判断を選ぶ人は半分の50%を統計的に有意に下回り、人手による判断に比べて避けられる傾向がやはり見られました。そこで研究チームは、アルゴリズムの中身を詳しく説明する「透明性」の条件を試しました。どのような情報を使い、どのようなルールで合否を決めるのかを開示したのです。ところが、驚くべきことに、これだけではアルゴリズムへの不信感は解消されませんでした。説明を増やしても、そちらを選ぶ割合に統計的に有意な改善は見られませんでした。
一方で、非常に効果的だった働きかけがありました。それは、アルゴリズムが「性別などのセンシティブな情報を使わない」ということだけを明確に伝えることでした。この情報を提示した条件では、アルゴリズムを選ぶ人の割合は約60%まで上がりました。
これらの結果は、候補者がアルゴリズムを嫌がるのはそれが単にブラックボックスだからではなく、「自分の性別などの属性が不当に判断材料に使われているのではないか」という具体的な懸念を抱くからだということを示唆しています。したがって、透明性を高めるためにアルゴリズムを詳細に説明するよりも、候補者が不安に思うポイントに絞って使わないことを明確に伝える方が効果を持つのです。
まとめ
実務においても、この知見は重要かもしれません。AI面接を導入した途端に、優秀な応募者が静かに離脱していくことがあります。こうした離脱は苦情として表面化せず、無反応という形で現れることもあります。採用担当者が「公平性を保つためにAIを導入した」と考えていても、候補者の側で「性別や年齢で差別されるのではないか」という疑念が生じているとすれば、逆効果になり得ます。AI面接を使った採用設計において必要なのは、候補者が何を「使ってほしくない」と考えているかを特定することのようです。職種や対象層に合わせて懸念される情報を洗い出し、「その情報は評価に含めない」と明言するコミュニケーションが求められます。
一般にこうした介入実験を行うと、「AI面接は嫌われる」という大まかな理解を超えて、打ち手につながる解像度の高い知見を得ることができます。価値ある知見を得るためには、(1)現場の仮説と(2)実験計画の知識を組み合わせた立案を行うことが重要です。
社会科学の知を現場に生かす―HAKASE for BIZのサービス
企業の課題を解決する第一歩は、現状を「測って理解する」ことです。HAKASE for BIZは、主に社会科学分野の研究者チームが、社内データ分析やアンケート調査、先行研究レビューをもとに、課題の構造化から検証までを支援します。 まずは60分の初回ミーティングで、状況整理と最小の検証設計プランをご提案します。
引用文献
すべて表示
- Dargnies, M.-P., Hakimov, R., & Kübler, D. (2024). Aversion to hiring algorithms: Transparency, gender profiling, and self-confidence. Management Science, 72(1), 285–301. https://doi.org/10.1287/mnsc.2022.02774